2019年度

滋賀県米原市甲津原集落における地域展示会+双方向型ワークショップ(11月)を実施し、展示動画の作成と事後評価調査、これらの実践を元にした理論形成に取り組んだ。

展示の過程は、動画により記録した。また、終了後、地域においてインタビュー調査を行い、未来の兆候としての食の意義、未来志向の行動の変容を促す可視化による地域への介入の様態に関して地域参加主体による評価を受けた。

実施したこと

1.住民参加によるレシピの動画の作成

  • 「たまちゃんのよもぎパン」(鈴木あき、たま親子による伝統食材の新たな利用法の開拓)
  • 「トチモチができるまで」(甲津原漬物加工部の人々によるトチモチ作成の過程と語りの記録)

2.環境型展示会の実施

  • 「たまちゃんのよもぎパン~よもぎの里甲津原|伝統の味/未来レシピをさがして」
    於・甲津原伝承館 11月1日~10日
    参加者のべ210人

3.1の動画を用いたレシピ聞き取りと絵画の双方向ワークショップ。

  • 『たまちゃんの「よもぎパン」を味わう!』(甲津原アーカイ部編集長への聞き取り)11月2日
  • 『トチモチの「のしもち」を味わう!』(甲津原漬物加工部、甲津原古老への聞き取りとトチモチ焼きの実施)11月9日

4.展示の開始から終了まで動画により記録した。

たまちゃんのよもぎパンはどのように展示されたか」として可視化高度化報告会に合わせて上映した。

5.事後評価

実践実施後の評価を地元での受け入れ担当者(甲津原アーカイ部代表)より受けた。

映像:「たまちゃんのよもぎパンはどのように展示されたか

マスコミ紹介
伊吹山テレビ(ケーブルテレビ)2019年11月15日号

理論形成

「手を嫌う」という地域語(方言)から、「地域の味」形成の萌芽を見出した。また、地域の未来には、開かれた地域の在り方が必要であることを確認し、そのためには、開かれの形成のための場としての可視化と映像利用の可能性が高いことを確認した。また、情報化による地域への参入者の可能性の高まりのために可視化が寄与することも確認した。

2020年度

「ウェブ・ミュージアム」と「ミニ・モバイル・ミュージアム」を制作し、未来資源としてのアーカイブ資料の可能性を顕在化する仕組みを開発し理論化を導く。昨年度蓄積した、食と方言に関する知識や経験を可視化する。

古老の座談会ワークショップで語られたトチモチをはじめとする過去の食に関する習俗やレシピと思いをプロによりイラスト化してもらい、語りの音声起稿と組み合わせ電子絵巻物を作成する。

実施したこと

甲津原アーカイ部の既存の取り組みとの接続により、『ゆるりの里』(本報告書の冒頭に表紙を掲載)電子絵本(提案時の「電子絵巻物」に当たるもの)を制作した。甲津原では、囲炉裏のことを「ゆるり」とよび、お話は「ゆるり」での会話を通して進んでいく。

絵本制作のアイデアは、甲津原アーカイ部が制作した絵本『麻の里』(2020年12月20日;絵 牛尾千聖)より得た。『ゆるりの里』は、甲津原アーカイ部の既存の取り組みとの接続のうちに制作されたもので、同部作成の絵本『麻の里』との連続性を有している。

滋賀県米原市甲津原集落での取り組みは,人間文化研究機構「博物館・展示を活用した最先端研究の可視化・高度化事業」のうち,総合地球環境学研究所「双方向コミュニケーションを基盤とした社会と科学の協働研究(超学際研究)の可視化・高度化の推進」(2018年度,2019年度,2020年度)の支援を受けて実施しました。